先月、牧野電器・牧野寛さん(下小野田)の直蒔栽培の田んぼの種蒔きの見学に行ってきました。 直播栽培を初めて約40年。昨年、牧野さんのコシヒカリは食味値で最高89点、平均は84~85点。食味ランキングで「特A」※になるほど高品質のお米を栽培されています。
※80以上が「特A」とされています。
※80以上が「特A」とされています。

▲牧野電器の牧野寛さん(71歳)▲
田植え機がいらない米作り
牧野さんの本業は電気店。寛さんのお父様の代から創業した「牧野電器」は、創業時はラジオやテレビの組み立て・販売を行っていたそうです。

牧野さんの本業は電気店。寛さんのお父様の代から創業した「牧野電器」は、創業時はラジオやテレビの組み立て・販売を行っていたそうです。

▲昔ながらの町の電気屋さん「牧野電器」▲

本業があるため、一般的な米農家の様に苗づくりに手間や時間を掛けられない事や、新しい事にチャレンジする牧野さんを家族が応援してくれたことから、周囲では当時誰も取り組んでいなかった直播栽培を始めました。

▲直撒き中▲
長年の研究により、種撒きは機械撒きではなくバラ撒きの方法が鳥害を防ぐ為に最も有効であることが分かり実践されています。
栽培管理で一番難しいのが、水の管理。田んぼの中で均一に一定の水量を保つためには丁寧な代掻きやその後の水管理が欠かせません。
直播の特徴とメリット・こだわりの酒米作り
直播栽培の特徴とメリットは、稲の土壌養分の吸収に優れた栽培方法で、田植移植時の根の切断による生育停滞が無いため、根の発育が充実し、その結果健康的な稲が育つことです。
栽培管理で一番難しいのが、水の管理。田んぼの中で均一に一定の水量を保つためには丁寧な代掻きやその後の水管理が欠かせません。

▲コーティング種子▲
直播用の種もみは、カルパー粉粒剤を使い、こんぺいとうの様に種もみをコーティングさせたものを動噴で撒いています。このカルパー粉粒剤の成分中の過酸化カルシウムが、土壌中の水分と反応して徐々に分解し、酸素を発生する仕組みで、 この酸素が種籾の発芽を促進するそうです。
直播栽培の特徴とメリットは、稲の土壌養分の吸収に優れた栽培方法で、田植移植時の根の切断による生育停滞が無いため、根の発育が充実し、その結果健康的な稲が育つことです。
▲直撒き中▲
コシヒカリの他は、酒米の「五百万石」と「玉栄」を作付しています。窒素の少ない環境で育ち、出穂時の追肥を行わない事により、清酒になった際の雑味を抑える低タンパクのお米に仕上がるそうです。また、倒伏を防ぐ肥培管理により、収量より品質重視の米作りを行っています。
「本業があるからこそ出来た」「毎年課題を見つけながら米作りをするのが楽しくてしょうがない」と仰る牧野さん。米作りに対し、自分の信念を持ち、飽くなき探究心を持ち続ける姿は、ただただ頭が下がる思いでした。よその田んぼと比べないこと
牧野さんの言葉で印象的だったのが、稲の生育の状態は「よその田んぼと比べず、去年の自分の田んぼと比べる」ということ。毎年稲の生育状態を写真に撮りため、パソコンに取り込み研究を重ねています。
山の健康が美味しいお米を作る
牧野さんの直播栽培の田んぼのある下小野田地区では、およそ12ヘクタール(12町歩)の田んぼが小野田川の自然水(山の絞り水)を利用しています。現在は、基盤整備事業により田んぼの水が自由にコントロール出来ていますが、こうした灌漑システムがない時代、今では想像できない苦労があったことでしょう。
牧野さんの直播栽培の田んぼのある下小野田地区では、およそ12ヘクタール(12町歩)の田んぼが小野田川の自然水(山の絞り水)を利用しています。現在は、基盤整備事業により田んぼの水が自由にコントロール出来ていますが、こうした灌漑システムがない時代、今では想像できない苦労があったことでしょう。

実際にお酒を味わってみました
品質を追求し、様々な研究を重ねた牧野さんの酒米は、御宿町の岩瀬酒造で清酒に加工されています。創業300年、伝統醸造技法「山廃酛」(やまはいもと)を採用している今では珍しい蔵元です。
先日、五百万石を使用した純米吟醸酒「岩の井」を試飲させて頂きましたが、フレッシュでコクがあり、無濾過生原酒のパワフルな味わいは、特別な日にお勧めしたいお酒です。
◎岩の井酒造株式会社
▲純米吟醸 五百万石「岩の井」▲
さらに今年の4月、岩瀬酒造と海外のお酒のスペシャリスト「ユニオンリカーズ」がコラボレーションした、牧野さんの田んぼのお米だけを使った「岩の井 単一田んぼ」シリーズが誕生。ワインのように楽しむ日本酒として、日本料理だけでなく、多種多様な国籍のお料理とのペアリングを楽しめるそうです。牧野さんの田んぼで友人が軽トラをはめてしまったご縁から、牧野さんの40年に渡る直播栽培の話や、思い掛けず美味しい日本酒の出会いに恵まれた時間でした。 とことん品質にこだわった牧野さんの酒米で作る日本酒、ぜひ多くの方に試して頂きたいです。
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