5月6、7日に長南町千田で行われた高田造園設計事務所・NPO法人地球守 代表 高田宏臣さんによるWSに参加させて頂きました。
※過去のWSの様子はこちら→
http://chonankyouryokutai.livedoor.blog/archives/13820251.html
 2日間合わせ、県内外から延べ120名ほどの方が参加され、里山の中で自然と向き合い住環境を整えていく智慧を学びました。

ヤブ化して崩れた裏山を整える
 継続して整備をしているフィールドは、縄文時代から人が住み続けてきたであろう痕跡のある土地。数百年、数千年と人が手を入れてきた裏山は時代の流れと共に、この数十年手が入らなくなったことや、誤った造作により、崖崩れを起こしたり、ヤブ化を引き起こしていました。
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▲指導する高田宏臣さん▲

 山際の地形変換線に溝を掘り、雨水が土中深く浸透していくように整えていきます。こうすることで木々の根も水脈に誘導され張り巡り安定が保たれます。
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▲山際の地形変換線に溝を掘る▲

 崩れた部分は、乾燥など土中環境の悪化が大きな原因。安定しているかどうかは苔の生え具合など植物を観察しながら判断していきます。
 崩れている斜面から水の湧き出し部分を見極め、直角に段を作りながら焼き杭を打ち、枝葉を縦・横・斜めに差し込み、しがらみを作り、隙間に落ち葉を入れる”谷しがら”で整えていきます。
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▲崩れている場所は”谷しがら”で地形を安定させる▲

 しがらみが中途半端だと泥が流れてしまいますが、しっかりとしていればここで泥が止まり枝葉に菌糸がつき地形の安定につながり、溝掘りをした水みちを守ることにも繋がります。
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▲掻き出した土は「敷き葉工法」で置き直す▲

 溝から出た土は適量を積んで平らに均したら、落ち葉、枝葉、竹炭、もみ殻くん炭といった有機物をサンドイッチしていき、空気の流れを作り、有用微生物が住みやすい環境を作ります。これを「敷き葉工法」と言います。日本に古くから伝わる伝統工法です。
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▲炭焼き釜を発見▲

 裏山整備を進めていくと、二日目に岩盤をくり抜いて作った大きな「炭焼き釜」を見つけました。
 この古民家フィールドの凄さは、昔の暮らしの名残りが数多くあり、環境を整えて行く度にまるで遺跡の発掘のような貴重で面白い発見があることです。
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▲炭焼き釜の内部▲

 釜の内部は煙突を出すための大きな溝が残っていました。町内で炭焼き釜の名残りをいくつか見てきましたが、これほど大規模に当時の面影が残っている炭焼き釜は初めてでした。
 
古民家周りのメンテナンス
 古民家周りのメンテナンスでは、溝の掘り直しを行いました。
 停滞していた水みちを整え、通気浸透性をよくしていきます。
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 溝の所々に大穴を開け、水と空気の通り道の改善をしています。
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 ▲所々に大穴を開ける▲

 ヘドロのような残土が出る場合、そのままマウンドに積み上げるとさらに環境悪化の原因になるので、下地に太い枝を入れたり、空気層を作りながら呼吸しやすい環境を作ります。
 WS二日目は高田造園スタッフの皆さんが指導にあたりました。
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 古民家前の雨落ちは、長いマイナスドライバーを使い、グリグリと縦穴を開け、竹炭・くん炭のミックスを加え、こちらも通気浸透性をよくするための作業を行いました。
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 ▲雨落ち部分の改善▲
 
 古民家の裏手にある山を背にしたラインの溝のメンテナンスも行いました。
 こちらは古民家改修のための管工事を行った際に、本来の水みちを無視して溝を作ってしまったために大きく環境が悪化した部分。
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 ▲古民家の裏手の改善▲

 池に堆積した泥を掻き出し、溝の掘り直しを行いました。また、山側の崩れかけた部分には谷しがらを行いました。

池周りの植樹・多様性が木々を元気にする
 前回の作業で池周りのメンテナンスを行いましたが、池や周辺の水みちが自然の力で安定するために大切なことは植樹です。池の堀直しをして出た残土のマウンドに植樹を行い、周囲の石積みが安定するように整えていきます。
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 植樹のポイントは、広葉樹・落葉樹・低木など様々な種類の木を同じマウンドに植えること。こうすることで互いに競い合って育ち、根の張りも良くなり、より早く環境が安定します。
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 小さなお子さん達も植樹をしたり、池の中の生き物を観察したり楽しそうに作業を行っていました。
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お楽しみのランチタイム
 毎回お楽しみのランチタイムは、交流の場でもあります。
 今回は都内から来た大学生を含む20代の社会人グループの方が、GWを利用しこのWSに参加してくれました。「長南町を訪れたのが初めて」という若者が何人もいました。
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 2日間でのべ140人分の食事は、施主さんやその友人らを中心に長南町の食材を使い、手作りで提供され、お昼のランチタイムはこのWSの楽しみの一つとなっています。
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▲筍ご飯▲
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▲筍の唐揚げ▲

ゆるやかなネットワークで動き出した「さと結い」
 今回のWSを様々な面からサポートしたのが、「さと結い」というネットワークです。
 (FBページ→https://www.facebook.com/satoyuiproject
 WSに使う資材(竹炭、落ち葉、枝葉、くん炭、焼き杭い等)の準備、食事作り、当日の交通誘導、ご近所の方への対応など一個人だけでは対応しきれないことも、共に支え合いながら今回のWSの対応に当たりました。
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▲WS中にご近所の方が来訪しご案内▲
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▲楽しい焼き杭作り▲
 田舎暮らしは自然と「結」が生まれ、つながり合い、一人では出来ないたくさんのことが出来る「豊かさ」があります。それは目に見えないセーフティネットでもあります。
 長南町には地縁・血縁のコミュニティも脈絡と受け継がれており、「さと結い」のような移住者を中心とする同じ意識を持ったコミュニティも生まれ、自分達のためだけでなく「地域のために何かをしたい」という温かな繋がりが生まれています。
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▲竹炭作りで余った分も販売▲

  WSの資材として作った「竹炭」は、近隣の荒れてしまった竹林の中を整備に入らせてもらい、綺麗にしながら余った分は販売に回し、環境を良くする事少しでも経済が循環する仕組み作りを模索中です。今回のWSで参加者から多くの需要があることが分かり、継続的に竹炭作りを行っています。
 長南町への移住希望の方でWSに興味のある方、また町内にお住まいで裏山や周辺環境の整備について興味のある方は、ぜひ地域おこし協力隊までお問い合わせください。
 この古民家がモデルとなった地球守自然読本③の配付や次回WS(今年の秋頃)のご案内、「さと結い」のワークショップのご案内をさせて頂きます。

◉長南町地域おこし協力隊 田島
☎ 0475-46-2113
✉ kyouryokutai@town.chonan.lg.jp

◎高田造園設計事務所HP
http://www.takadazouen.com/

◎地球守H P
https://chikyumori.org

◎地球守オフィシャルチャンネル(高田さんの講演、ワークショップ等の様子)

https://www.youtube.com/channel/UCHoo6WCjLheHc0D-GlYTEdw