木こりである夫の田島俊介が、昨年末から仲間達と試験的に水沼地区にある杉の人工林に手を入れて「多様性の森プロジェクト」と名付け、個人的に活動しているプロジェクトがあります。
 戦後の拡大造林で植えられた杉は、伐期を迎えたにも関わらず放置され、里山の荒廃にもつながっています。常緑の杉だけの単一樹種林は、他の木々や植物が育ちにくく、生物多様性は極めて低く、そこに風穴を開けていくことは急務です。
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 根の浅い杉は倒木しやすく、土砂崩れの原因にもなり、人々が安全に暮らしていくためにもいつかは手を入れていかなくてはならないものです。
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                 ▲谷筋に倒れる杉の倒木▲ 

新月伐採・葉枯らし乾燥とは?

 この「多様性の森プロジェクト」は杉の人工林を単純に伐採するのではなく、”新月伐採”という方法を取り入れながら新月前(下弦の月から新月の間)に伐採しています。樹木の中に栄養水の残留が少ない切り旬(冬季の新月)の時に伐採し、数ヶ月間放置して”葉枯らし乾燥”をさせ、木の養分を飛ばし、虫がつきにくい材ができるのです。
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▲新月伐採・葉枯らし乾燥中の杉▲
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 さらにはパッチ状に間伐し(明暗を作り、温度差で風を呼び、空気を通す)、かつ開口が空きすぎないよう間伐しすぎに注意する(光の入れすぎによる乾燥を防ぐ)ことを取り入れながら作業を進めまた。
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▲倒すときも細心の注意を払う▲
 雑木の実生木を傷つけないように、伐倒方向は細心の注意を払って決めることがベストですが、自然界は教科書通りにいかないもの・・・・。反省と改善を繰り返しながらも大変な作業を一緒にやってくれる仲間がいることは心強いことです。
 長南町里山再生プロジェクト「さと結い」の仲間やSNSでの呼びかけで多くの仲間が集まってくれました。 
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▲地拵えをしながら作業をする▲
  斜面を歩く時は常に段切りしながら、必要に応じて丸太と杭で蹴上げを作り、落ち葉や炭で養生していきます。
 また整備をしていると当然、市場には出せないような材も出てきますが、林道を整備したりこれも土木工事には欠かせないものになります。
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 ▲市場では売れないような丸太も全て使える材になる▲
 そしていちばん大変な作業が集材。雑木の実生を傷つけないようにポータブルウインチを使ったり、地元の里山活動団体「のみがね会」 の方のご協力を得ながらユンボで搬出作業を行いました。
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▲ポータブルウインチによる搬出▲
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▲「のみがね会」の方に搬出のご協力をいただきました▲

ついに製材所へ!長南町の杉のブランド化なるか?

  先月、長柄町の仲村産業さんで行われた製材の現場を見させていただきました。製材所の方が「良い木だ!」と何度も連呼してくださり、「化粧材にもなる、板にするのがもったいない」とまで仰ってくれました。
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 今回製材した材は地元の理解ある建築業者さんが買い取ってくれることになりました。
 多様性のある森を作り育てながら、邪魔者扱いされる杉を活かし、少しでも経済を回し里山に光を入れていくこと・・・・。資金や労力もかかることであり、果てしなく長い道のりになりそうですが、応援していただけると嬉しいです。

 こうした多様性のある森作りが、土中環境を改善し自然災害が起きにくい安定した森へと繋がり、近年問題化しているナラ・シイなどの高木枯れや獣害対策にも結び付き、長南町の豊かな里山環境を維持する上で大切なことのように思えてなりません。

「長南町多様性の森プロジェクト」について夫がnoteでも発信中です。
 ぜひフォローをよろしくお願いします。
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